洗濯洗剤・柔軟剤について学ぶ
ふっくら仕上がる【柔軟剤】働きと成分
洗剤とは別に、衣類を柔らかく仕上げるために柔軟剤を入れるという方も多いでしょう。柔軟剤にはどのような成分が含まれていて、それぞれがどういった働きをするのかを科学的に考えてみましょう。
柔軟剤の働き
洋服やタオルといった衣料品はただ単に繊維や布を織って完成ということではなく、肌触りや風合いを良くする為に化学的な仕上げ処理がされています。仕上げ剤として家庭用のものよりも持続性が高くしっかりとコーティングできる柔軟剤が使われ、製品の肌触りや風合いをよく仕上げています。
洗濯と乾燥を繰り返すことで衣類のふんわり感がなくなる・シワや毛玉が目立つようになる・形が悪くなるといったトラブルが起こるのは、この仕上げ剤によるコーティングが取れて繊維が細くなることや繊維が変質することが原因です。
家庭用の柔軟剤の働きは、仕上げ剤として使われていた柔軟剤の力を補い、衣類をより良い状態で保つというものです。繊維の1本1本をコーティングすることで、繊維同士の摩擦を防ぎ衣類をダメージから守ると共に、手触りを柔らかくする・静電気を予防するといった効果を発揮します。
柔軟剤に含まれる成分
家庭用柔軟剤の主成分は「界面活性剤」です。界面活性剤というと、洗剤の主成分であり汚れを落とす働きを思い浮べる方も多いでしょう。しかし、柔軟剤に含まれる界面活性剤は洗剤用のものとは性質が異なる為、働きが異なります。
洗剤に使われている界面活性剤は陰イオンや非イオンという種類です。これらは、界面張力(物質同士の境)を低下させることで、付着した汚れを乳化・分離させる働きをもちます。
一方で柔軟剤に使われる界面活性剤は“プラスに帯電する性質(陽イオン)”を持ちます。
水の中で繊維の表面はマイナスの電気を帯びているため、プラスの界面活性剤が繊維1本1本をコーティングするように吸着します。これにより、繊維同士の摩擦・毛玉やシワの発生を防ぐことに繋がります。また、繊維同士の間にスペースができることで衣類が堅くなることを防ぐと同時に適度に空気を含むようになるため乾燥時間の短縮にも効果を発揮します。
また柔軟剤に含まれる陽イオンは高い親油性をもっており、繊維が薄い油膜で覆われたような形となり、手触りが柔らかくなるという仕組みです。
洗剤との相性は悪い
上述したように、洗剤に含まれる界面活性剤と柔軟剤に含まれる界面活性剤はいわば対照的な関係です。同時に使用してしまうと本来は衣類に働きかけるためのものであるにも関わらず、お互いのイオンが結合してしまい洗浄・柔軟どちらの機能も発揮できなくなります。
全自動洗濯機では、柔軟剤の投入口に入った液体はすすぎの段階で投入されるような仕組みになっていますので、洗濯槽に直接入れるのではなくきちんと柔軟剤用の投入口に適量入れて洗濯機を使うようにしましょう。
プラスアルファの効果
近年の柔軟剤市場を見ると、香りに対するニーズがとても高いことが分かります。柔軟剤に含まれる香料が繊維の内部に吸収されることで、着ている間も心地の良い香りが維持されるという仕組みです。中にはマイクロカプセルを使用し、熱や摩擦の熱で香りが広がるものもあります。
注意したいのは、これらの香料のほとんどが化学物質で出来ているという点です。一般的に香料と呼ばれる化学物質は数千種類以上あるとされていますが、どの香料物質をつかっているかを成分表示に公開する義務はありません。そのため成分表示をみてもどのような成分を使っているのかを知ることができないケースも多いのです。
生活の中で触れる化学物質の量が増えていることで、化学物質過敏症という病気を発症する人が増えていると言われており、原因の一つに柔軟剤の香料があげられています。柔軟剤を香り付きのものにする際は、洗剤を無香料のものにする・柔軟剤を規定量以上入れすぎないなどの配慮が必要です。
他にも、長時間汗や皮脂によるニオイを防ぐという抗菌・消臭といった効果を持つ柔軟剤も増えてきました。柔軟剤の成分として抗菌剤を加えることで、着用時にかいた汗などから菌が繁殖することを防ぎ、ニオイを防ぐというメカニズムです。
他にも部屋干し時など、衣類が濡れている時間が長いことで菌が発生し、生乾き臭が起こるというサイクルを防ぐ効果もあります。
柔軟剤で衣類長持ち
いまでこそ、柔軟剤は衣類に良い香りをつけて着心地感をアップさせるものとして定着しつつありますが、柔軟剤の基本的な働きは、衣類を買った時と同じような良い状態を保つことにあります。衣類の繊維をコーティングすることで、繊維をダメージから守ると共にふんわりとした柔らかさを保ちます。
自分好みの柔軟剤を使って、大切な衣類をより良い状態で長持ちさせてあげましょう。