ペットについて学ぶ
ペットのしっぽ「尾」の役割とは?
犬や猫といったペットの持つ身体的特徴の一つとして“尾”があります。尾は動物にとってどのような役割を果たす部位なのでしょうか?また、尾に起きやすい様々なトラブルなど知っておきたい情報をまとめました。
動物の尾
犬や猫には付け根の部分から尾の先端にかけて、複数の「尾骨(びこつ)」という名前の骨があり、周りは複数の種類の筋肉で覆われ、骨の中心には脊髄神経が通っています。骨の数は、動物の種類によって異なりますが、犬で10~20個程度・猫で15~20個程度が平均的です。
尾にも種類があり、形状や長さ・毛の生え方の違いなどで、犬猫それぞれ10種程度の名前が付けられています。野生として生きていた頃の名残や進化の過程での変化によりこのような違いのある尾の遺伝子が生まれたと考えられていますが、人為的に尾をカットしたもの同士を掛け合わせて短尾として生みだされている可能性もあります。
尾の持つ役割
尾は、意図的に動かしている時もあれば、人間の表情のように気持ちの変化に応じて自然と動きが変化するものもあります。上記はあくまでもその動物ごとの傾向にすぎないので、個人差も大きいとされています。
尾の動きから感情を読み取るには、耳の動きや鳴き声など全身の様子も合わせてチェックしながら、その子がどのような感情の時にどのような尾の動きをさせているかを観察するところからスタートさせると良いでしょう。
意思表示 | 犬 | 猫 |
---|---|---|
機嫌が良い | 大きく左右に振る | 立てる |
機嫌が悪い | 足の近くまで下がる | 素早く左右に動かす |
リラックス | 垂らしてゆっくりと動く | ゆっくりと動かす |
警戒している | まっすぐに立てる | 毛を逆立てる |
バランス維持
人間が歩いている時に自然と両腕が前後に揺れるのと同様に、動物は尾を上下左右に振り動かします。これにより、尾が舵の役割をすることに加えて、骨盤の位置を調整することでバランスをコントロールしているのです。
体温調節
寒い時に、身体を丸めて尾に包まるようなポーズをとり、暖をとることがあります。主に野生の動物に見られる行動ですが、ペットとして飼われている犬や猫が就寝時に同様のポーズで身体を温めることがあります。
尾のトラブル
尾のトラブルで最も多いのは「骨折」と「脱臼」です。骨折とは、尾を形成する尾骨が折れてしまうことで、脱臼は尾骨と尾骨を繋ぐ関節部分が剥離してしまうことを意味します。
飼い主や他の動物に踏まれる、ドアに挟む、ぶつけるなど日常生活の中で負ってしまうことが多く、特に活動的な子にとっては予防しにくい部分です。
骨折や脱臼の痛みにより、歩行異常や排泄が上手くいかない、痛みのストレスから攻撃的になるなどの変化が見られます。
なかには骨折していたとしても、日常生活の中で症状が見られないこともあります。スキンシップの中で、尾を触ることを過剰に嫌がる様子や身体をそむける仕草が見られた時は注意が必要です。
骨折や脱臼かもしれないと思ったら、すぐにかかりつけの動物病院を受診しましょう。レントゲンや触診で状態を確認し、基本的には人間の骨折と同様に患部の固定での治療が行われます。
他にも尾に関わるトラブルとしては、尾に強い刺激が加わることでの「神経麻痺」があげられます。尾は中心部に尾骨神経という神経が通っており、骨盤神経や下腹神経など身体の重要な諸神経と繋がっています。
尾に強い刺激が加わることで、尾骨神経を通して他の神経系にダメージが加わり下半身まひや歩行障害などの異常を起こす危険性があります。
スタッドテイル(尾腺炎)
尻尾に関わる皮膚病の一つで、犬や猫といったペットとして飼育される動物に多く発症がみられます。尾の付け根にある尾腺と呼ばれる部分から出る分泌物の異常により発症する病気で、遺伝やホルモンバランスなど諸説ありますが明確な原因は解明されていません。
分泌物が過剰となることで、尾の被毛が黒ずみ湿り気を帯びます。症状が悪化すると、脱毛や地肌の浮腫や炎症などが起こります。
リンバーテイル
別名フローズンテイルとも呼ばれる現象で、尾がだらりと下がり動かなくなる状態を意味します。筋肉が急激にダメージを受けたことで動きが非常に鈍くなることが原因であるとされており、筋肉痛の一種ではないかという見解が有力視されています。
泳いだ後に発症することが多いため、水が苦手な子が多い猫の発症はあまり聞かれません。
愛らしさだけじゃない大切な尾
尾は、ペットにとって非常に大切な身体部位の一つです。同時に、とても外傷を負いやすい部位の一つでもあるため、日頃から異常がないか気を配ってあげる必要があります。
尾を触られることを嫌がる子も多いので、スキンシップの際には怒られない程度に注意しながらケアをしてあげましょう。