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低たんぱく食とは?どんな人に向いている?メニューもご紹介
たんぱく質を積極的に摂取しようという話は多く聞かれますが、反対にたんぱく質の摂取量を制限した「低たんぱく食」というものがあります。低たんぱく食とはどのようなものなのか、定義や特徴・注意点などを解説していきます。
低たんぱく食とは
その名の通りたんぱく質の摂取量が少ない食事のことで、「腎臓病食」や「肝臓食」とも呼ばれます。たんぱく質を控えながらも、エネルギーを十分量摂取できるような献立が理想とされており、明確な定義はないものの1日のたんぱく質摂取量が40g前後になる献立のことを指して使います。
低たんぱく食とは、主にフェニルケトン尿症やホモシスチン尿症といった遺伝性代謝障害など、腎臓や肝臓に特定の疾患を持つ人に対して提供される食事です。これらの疾患を抱えている人は、たんぱく質が体内で代謝された際にできる老廃物を処理する機能が低下しているため、老廃物が体内に蓄積してしまいます。
このような状況が続くと、腎臓や肝臓の機能低下が更に進んでしまうことに加え、体内で発生した毒素のろ過ができなくなり尿毒症など別の疾病を患うリスクがあります。そのため医師が臓器に負担をかけない最低レベルの摂取量を判断し、たんぱく質を制限する食事指導が行われます。疾患の重症度合いにもよりますが、目安たんぱく質量が1日に30g~50gに定められることが多いです。
特別用途食品とは
特殊な加工が施されており、通常の食品よりも栄養価がコントロールされているものを「特殊食品」と呼びます。病気を患っている人や乳幼児・高齢者など通常の食生活を営むことが難しい人のための食品で、ドラックストアや通販などで購入が可能です。
各種特定の基準が設けられており、消費者庁及び厚生労働省が販売許可を出したもののみが「特別用途食品」を名乗ることができます。低たんぱく食においては、米や蕎麦、うどん、食パンなど主食類の製品化が多い傾向にあります。たんぱく質含有量は通常の1/35~1/20程度にまで抑えてあり、臓器に負担をかけずに食事を楽しむことができるよう工夫されています。
具体的な低たんぱく食メニュー
実際の低たんぱく食とはどのようなものなのか、献立を見てみましょう。
白米150g…3.8g 野菜サラダ…1.5g 目玉焼き1つ…6.2g 味噌汁半分…1.1g | バターロール2つ…5.2g ハムコーンサラダ…4.6g マーガリン4g…0.1g 粉末スープ…1.6g | 春雨サラダ…0.3g 鍋のもと…2.1g 豚ロース30g…5.8g 野菜…0.7g おにぎり(75g)…1.9g |
合計:12.6g | 合計:11.5g | 合計:10.8g |
上記のメニューで合計34.9gのたんぱく質量となります。肉、卵、牛乳、大豆などイメージに容易いものはもちろんですが、小麦(パン・うどん)やご飯といった日本人が主食とする食品にも、多くのたんぱく質が含まれていることが分かります。
上記の献立では使用していませんが、上で解説した特定用途食品を使用することで更にバリエーションを広げた満足度の高い献立を考えることができるでしょう。その一方、特定用途食品は一般の食品に比べて価格が高く継続しにくくなってしまうケースもみられます。そのため上記の献立のように、通常の食品をベースとした低たんぱく献立を推奨する病院も多いです。
低たんぱく食の注意点
人間の身体を構成する成分の内、水分の次に多いのが蛋白質であり「身体をつくる栄養素」とも表現されます。たんぱく質摂取量が著しく減少することで、筋肉量・免疫機能・基礎代謝など全身の様々な機能が低下してしまい不調の原因となり、場合によっては別の疾患を発症することにも繋がります。
低たんぱく食という概念があるのも、たんぱく質が人間にとって必要な栄養であるからです。腎臓や肝臓に負担となるからといって完全に除去すれば良いということではなく、疾患の度合いに応じて負担となりすぎない範囲でたんぱく質の摂取は必要不可欠なのです。
低たんぱく血症とは
血液に含まれるたんぱく質やアルブミンといった栄養素が低下する病気です。血中のたんぱく質の量が6.7~8.5(g/㎗)が正常の範囲内で、これを下回ると低たんぱくと判断されます。浮腫み・免疫低下・体力や気力の低下・貧血・食欲不振・胸水や腹水など身体の内部に水が溜まるといった症状が出ます。
蛋白漏出、蛋白合成障害、異化亢進といった臓器トラブルが原因である場合もありますが、低たんぱく食を心がける上で、摂取量に過度な制限を掛け過ぎてしまうことで発症することもあります。また、近年では過度なダイエットによる栄養不良が原因で、この低たんぱく血症を発症する人が増えてきているといわれています。
低たんぱく食は健康な人に向いていない
たんぱく質は、人間が生きていく上で非常に重要な役割を担う大切な栄養素です。低たんぱくの食事は基本的に内臓系に疾患を抱えている人だけに推奨されるものであり、健康な人が取り入れると低たんぱく血症や免疫力の低下など心身のトラブルの原因となりますので注意しましょう。